高品質のリードの開発・製造で知られるAlexander社よりテナーサックス用のマウスピースが発売されました。
すでにアメリカ、ヨーロッパでは販売されていますが、今回、日本では初めての販売となります。今回、開発者・代表であるトム・アレクサンダー氏にインタビュー致しました。
トムさんご自身も元々サックス奏者でプロとして活躍されていたと聞きましたが?
はい、私はジョーヘンダーソン、デイブリーブマンという偉大なサックス奏者と一緒に勉強しプロサックス奏者として活動していました。
アメリカでプロ奏者として活動後、1982年に日本に移り、東京エリアではPit-in、Sometime、Body&Soul、Alfieその他、ほとんどのライブスポットで演奏していました。
また、東京ジャズでのツアー、日比谷公園のフェスティバル、小樽ジャズフェスティバル等への参加も。その他、巨匠エディゴメス等と一緒にPrestageというテレビ番組をやった事もあります。
そうそう、日本の有名なトランペットプレイヤーである日野皓正さんと一緒にスタミナドリンクのTVコマーシャルに出演したことも良い思い出です。
トムさんのお父様もスタジオミュージシャンだったそうですね?当時のレコーディングセッションの際、一緒に演奏していたプレイヤーのリストを拝見しましたがものすごい顔ぶれですね。
はい、私の父は多くのラジオやテレビの公演を行うスタジオトロンボーンの仕事をしていました。
トムさんが、今のようにリードやマウスピースを開発する事になった経緯は?
元々私はヴィンテージサックスに関心があり、ヴィンテージのサックスとマウスピースを取り扱う小さなビジネスをカリフォルニアで営んでいました。
ちょうど、ジョーヘンダーソンと一緒に勉強していた時期です。
私は数年間、ジョーヘンダーソンとデイブリーブマンが使っているマウスピースについて研究を重ねました。
その後は、リードやマウスピースの開発に専念するようになります。
1990年代後半のマイケルブレッカーのコルトレーンコンサートの終了後、私は彼と1時間以上にわたりサックスのパーツの話で盛り上がりました。
ジョーヘンダーソンを敬愛するマイケルブレッカーと色々と話せる機会があったのは、とてもありがたいことでした。
彼は、高品質の葦(リードの素材)で製造されるリードを探していました。
また、リードの先端部分がより硬いリードを求めていました。
これは私自身も感じていたことでした。
その時のリサーチから生まれたのが、現在、製造しているアレクサンダーリードNYモデルです。
それではマウスピースの事についてお伺いいたします。今回、発売されたマウスピースの開発コンセプトを教えて下さい。
マウスピースの開発に関しては、何年も前から計画をしていました。
マウスピースの開発で重視する事は、やはりクオリティの高いビンテージマウスピースの良さを継承する事。
但し、当時のままでは現代のプレイには向かない部分もあります。
ですので、ヴィンテージマウスピースの本質を再現しつつ現代のサウンドにも適合するようなマウスピースを開発する事。
例えば、オットーリンクスラントは大変すばらしいマウスピースです。
しかし現在は、昔よりも高い精度で製作できるテクノロジーもありますので、それよりも吹きやすいマウスピースを作りたかった。
私は吹きやすさに着目し、楽にフラジオ音域に到達できるようなデザインに仕上げようと思いました。(現代のフレーズにアルティッシモ音域は高い需要がありますから)
開発を続けた結果、十分に倍音を持ち、十分なボリュームを出せるとてもあたたかい音色を
有するマウスピースのデザインが完成しつつありました。
数回のプロトタイプのテストの際、私はその完成度に満足ができませんでした。
それから開発を重ね19回目のプロトタイプを私はジョーロヴァーノに送りました。
彼から低音域部分に関してのアドバイスをもらい、テナーらしいあたたかいサブトーンをより快適に出せる工夫を施し20回目のプロトタイプを完成させ、再度、ジョーロヴァーノに送りました。その結果、ジョーはとても満足してくれました。
そしてこのデザインのマウスピースを、デイブ・リーブマン、ドニー・マッキャスリン、グ
レッグターデイに送りました。彼らの誰もが満足できるマウスピースに仕上がっていました。
何年も時間をかけた私の夢であったマウスピースを作り上げる事が出来た瞬間でした!
最高レベルのCNCで設計、素材はドイツ製の硬質ゴムを採用。Superial 1 Jazzを発表しました。
このマウスピースは私の最高傑作です。
私自身の多くのライブ演奏経験から派生したサウンドのコンセプトと
私が長年にわたって働いてきたサックス奏者(※)達の意見が詰まっています。
※マイケル・ブレッカー、ジョー・ロヴァーノ、デビッド・リーブマン、ジョシュア・レッ
ドマン、
ボブ・バーグ、ブランフォード・マルサリス、ドニー・マッカスリン、グレッグ・オスビー、
ラヴィ・コルトレーン、グレッグ・ターディ、その他多数。
このSuperial 1 Jazzマウスピースをどんなプレイヤーに試してほしいですか?
ジャズサウンドに焦点を絞って開発したマウスピースです。
しかし結果的に汎用性の高いデザインに仕上がりました。
フュージョンやロックプレーヤーにも確実に適応できます。
ラバーマウスピースではありますが、吹き方によってはメタルマウスピースのようなサウンドを出す事も可能です。
デビッドリーブマンのこれらのクリップがそのことを証明しています。
ランディのソロの後、約3:28頃からのリーブマンのソロ。
数ヶ月前のライブと比較すると、まるでビンテージのような丸みのあるトーンです。
硬質ゴムのOtto Link Tone Edgeと比べてより多くの突起と使いやすさを備えており、
高音も強いアタックで演奏できるように仕上がっています。
この2つのビデオから、今回開発したアレクサンダーマウスピースは、
2つの異なる方向性で演奏できることがわかります。
わかりやすく言うと、コルトレーン型でもロリンズ型でも演奏できるという意味です。
同じマウスピースで吹き方でこれだけ音色が変わります。
数多くの有名なプレイヤーを満足させることができたアレクサンダーマウスピースですが初心者プレイヤーにも吹きこなせますか?
そもそも、プロ奏者と上級アマチュアを念頭に置いて開発していますが、とてもよく響き、スムーズに息が入る設計ですので初心者の方にも吹きやすいはず。
但しご存じの通り、そのためには少なくとも数年の練習と基本的な知識を身に付ける必要はあると思います。
製造時に、マウスピースの左右のサイドレールのバランスを確認していますか?
もちろんです。テーブル、サイドレール、チップは非常に重要です。
ここで最高のバランスをとるために多くの時間を費やしました。
これはある意味一種の錬金術といえるかもしれません。
適切なバランスをとるために常に意識しています。
非常に正確なCNC製造を採用していますし、最終仕上げは手作業にて行っています。
最後にトムさんのもとに届いたレビューをいくつか紹介して頂けますか?
Alexander Superial 1 Jazzテナーマウスピースは、暖かく美しい色に満ちています。 広いダイナミックレンジ内で素晴らしく応答することがわかりました...
それを試して、それはあなたの人生を変えるかもしれません
(ジョー・ロバーノ)
トムアレキサンダーの新しい作品は、すべてのレジスターで完璧に反応し、私のスタイルに不可欠なダイナミックで進行中の表情豊かなニュアンスにすぐに反応する能力を持っています。 Alexander Superial 1 Tenor Mouthpieceが歴史を築きます!!(デイブ・リーブマン)
美しいデザインとワークシップを示しています。素早い反応、大きくて温かみのある、焦点の合ったサウンド、優れた柔軟性-マウスピースに求められるすべての品質。 抜群です!
(グレッグ・ターディ)
素晴らしいマウスピース、トム!「Superial I Tenor」は、楽器の全音域にわたって完全で深みのある共鳴音をお探しの方に最適なオプションです。 素晴らしく一貫して再生されますので、試してみることを強くお勧めします!(ドニー・マクカスリン)
丸みを帯びた豊かなサウンドが本当に気に入りました。
曲を演奏するたびに驚かされます。
もう何年も前から、このマウスピースで演奏しているかのようにとても快適です。
今までプレイした中で最高のマウスピース。
(トニー・ラカトス)
アレクサンダーマウスピース製品詳細